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南信州で育まれたスギ•ヒノキを利活用した「信州健康ゼロエネ住宅」

取材日:2023年9月3日

南信州で育まれたスギ•ヒノキを利活用した「信州健康ゼロエネ住宅」
新築 南信
施工会社

大蔵建設株式会社

本記事は、長野県がゼロエネ住宅建設における事業者の方々の取り組みを取材したものです。

1972年、製材業、建築請負業として創業した飯田市の大蔵建設株式会社(以下大蔵建設)。南信州で育まれたスギ、ヒノキを利用した丈夫な家づくりをするとともに、南信州木材の普及にも努めています。
約30年前から太陽や風の自然エネルギーを利用したパッシブデザインを家づくりに取り入れ、夏は涼しく、冬は暖かい快適な住まいを追求。さらに近年は太陽光を利用したソーラーパネルによる自家発電でゼロエネルギー住宅を推奨、2050年ゼロカーボンに向け長野県が普及を進める「信州健康ゼロエネ住宅」の基準にも適合します。

「信州健康ゼロエネ住宅」は「光熱費が安い」「健康で快適」「災害にも強い」「豊かな暮らしを実現」が特徴で、その基準に適合する住宅は最大200万円までの助成金を受けられます。

大蔵社長画像

(「信州健康ゼロエネ住宅」のメリットについてお話しいただいた「大蔵建設株式会社」の大蔵社長)
 

品質が高い南信州の木に誇りを持つ 

内観

(南信州の木材を使用した、落ち着いた内観)

「信州健康ゼロエネ住宅」に欠かせない県産木材。
ただ国策もあり30〜40年前はほとんどの住宅用の木材はロシア、カナダ、アメリカからの輸入が多かったという日本。当時の木材事情を大蔵さんに伺いました。

「南信州の山は、戦前(80年前)随分と伐採し禿山が多かったそうです。戦後は、林業家が植林し間伐をしながら山を育ててきたのですが、原木が建築の構造材になるには40年から60年はかかります。その間、国策もあり、安く入る外国産材への依存度がどんどん高くなっていきました。製品として納入される外国産の構造材は、きちっと乾燥もしているし強度も表示されるなど、品質が秀でていて使い勝手も良かったので、当社でも使用していた時期がありました。その結果、地元林業家~製材工場~建築会社の流通ラインは壊れてしまったんです。」 

その後、父親の代から息子である大蔵さんの代に会社が引き継がれます。

「当時私が地元に帰ってきて設計士として家づくりをやるようになって、ちょうど山でも木がしっかり育っていたので使わないともったいないということで飯田下伊那の製材所、建築屋さん、設計士さんたちと話し合い、『南信の木を使いましょう』となったんです。まったく使っておらず、戦後60年たっていたから木もしっかり育っていましたので。」

山では木が育っていましたが、大蔵さんはもう一つ実際に感じていたことがありました。

「その当時は渓流釣りが趣味で、山に釣りにいくんですが、植林した針葉樹林の手入れが行き届いていないところは、もう荒れ放題荒れていて、やっぱり災害も何回かありましたし、これはみんなほったらかしになったスギとヒノキを植林した山が、災害の原因になっているとわかったんです。そこから考えないといけないとなり、全部構造材に関しては地元の木にしようと決めました。」

スギ、ヒノキは60年くらいが品質的にもちょうどいい使い時期で、大蔵さんたちは一度途切れた飯田下伊那の木材の流通の仕組みを整え、再び南信州の木を使うよう尽力します。


そこで林業を主な事業としている「根羽村森林組合」さん、遠山谷の飯田市第三セクター「ウッドアンドアース」さんに相談に行き大蔵さんはあるお願いをしました。
(後日ウッドアンドアースは、現在は飯伊森林組合に統合)

「『乾燥をきちっとすること』そして『材木の強度と乾燥状況を明示して出してくれるとありがたい』と相談したんです。そしたら根羽村森林組合、ウッドアンドアースの方々が、ありがたいことに話を聞いてくれて、こちらがお願いした材木を出してくれるようになったんです。」と大蔵さん。

そして両事業所とも、信州木材認証製品の基準に基づいた乾燥基準で含水率の確認を行い、また強度については依頼すればヤング係数(木材に加えられた曲げの力とそのときの木材の縦歪みやたわみの程度の関係を表す数値で、その数値が大きいほど(曲げ)強度が高いといわれる)を出荷前に明示して、確認できるようにしてくれたといいます。

内観写真

(県産木材を使った丈夫な家づくりを行う大蔵建設)

 

南信州の木を使い丈夫な家づくり

品質と素性のはっきりした信州木材認証製品を南信州地域から仕入れることができるようなった大蔵建設では実際に構造材などに用いています。

そして、その高い耐久性のある構造材を使い、軸組み工法(日本で最も多く建てられている工法で、柱や梁を組み合わせた工法)+箱型工法(壁面と床、屋根面を面材で固める工法)で耐震性能を高めていると大蔵さんは話します。

「水平構面(二階床面、屋根面)に関しては梁(はり)と梁の間に36ミリ、24ミリの厚いスギの板で固めます。同じように床を固めたら壁も固めていきます。例えばダンボール箱を例にすると、ダンボール箱は壁を4面立てただけではくしゃっとなるけど、そこに上と下のふたも閉めると丈夫になります。」

さらに、その構造材の梁などは、天井裏に隠さないことで(常に見えることで)維持管理時の点検を容易にしています。

構造イラスト

(大蔵建設が行う軸組み工法のイメージ図)

 

パッシブデザインと高い断熱性能で快適に、光熱費も安く

夏は涼しく、冬は暖かく過ごすために必要な断熱性能。大蔵建設では、そのために必要な調湿性のある断熱材を十分入れ、窓も性能の良いペアガラスもしくはトリプルガラスを採用しています。
その時に通常、窓はトリプルガラスの方が断熱効果はありますが、飯田地域は特に冬の日射率がいいこともあり、なるべく昼の日射が入るよう南の窓を大きくし、あえて日射取得を優先してペアガラスを採用することもあるそう。

これは、自然の通風と太陽の恵みを取り入れるパッシブデザインの考え方です。

このように断熱性能を高め、同社では断熱等性能等級6(推奨基準)を取得し、省エネルギーで暮らせる家に仕上げています。
省エネ基準の家と大蔵建設がつくる信州健康ゼロエネ住宅の推奨基準で建てたときの温熱計算による冷暖房費を比較したものがこの断熱診断書です。
省エネ基準の家では断熱性能を表すUA値を0.75とし、それに対して信州健康ゼロエネ住宅の推奨基準に適合する家のUA値を0.34とし、電気料金の単価を40円としてシミュレーションをすると、省エネ基準の家では年間の暖冷房費が32万6,993円と比べ、信州健康ゼロエネ住宅の推奨基準の家の年間の暖冷房費は24万847円となり、8万6,146円安くなります。

このデータはシミュレーションで、実際の暮らし方によって光熱費は上下しますが、一般的に断熱性能が高いと光熱費が安くなるので、環境や健康にやさしいばかりでなく家計にもやさしい暮らしになります。

断熱診断書

(計算ソフトは「住宅性能診断士ホームズ君 省エネ診断エキスパート」を使用している。)

 

太陽光発電を利用し家計にも環境にもやさしく

そして、最後にゼロエネルギー住宅に必要な再生可能エネルギーの取り入れ方について大蔵さんに伺いました。

「もともと温暖化じゃなくても建物でゼロエネが実践できればいいなと思っていたんですよ。20年前かな、太陽光発電が出始めの頃、何度か使ったんですよ。太陽光発電の成績はよかったんですが、すごく高価でした。それだけで300万円プラスです。その後、今は発電パネルも安くなってきたので、それを5キロワットアワーくらい載せると結果、ゼロエネになるんです。20年くらい前からみんな考えていたんだけどコストが掛かったのです。今は県から助成金も出るしチャンスかもしれないですね。助成金の満額も昨年度から上がり200万円ですから。建築資材の高騰もあるし、それは助かりますね。」

飯田市も温暖化の影響で夏の気温は10年前に比べかなり高くなったと話す大蔵さん。今後は、快適に過ごせ光熱費も安く、環境にもやさしい「信州健康ゼロエネ住宅」が、ますます必要な時代になるのではと考えています。

ソーラーパネル

 

【会社情報】
大蔵建設株式会社 
長野県飯田市丸山町2丁目6732-13 電話:0265-24-6464
https://okurakensetu.com/(別ウィンドウで外部サイトが開きます)

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